音声解説 村上海賊新発見15選

2016年度に認定された日本遺産『日本最大の海賊”の本拠地:芸予諸島-よみがえる村上海賊の記憶-』。
昨年度、その活動と今後の計画が評価され、認定継続となりました。

日本遺産認定から7年。
おのみち歴史博物館で、日本遺産調査研究成果報告 今治・尾道巡回展
「村上海賊新発見15選」が開かれています(12月25日まで)

認定後の調査で新たに分かった村上海賊とその末裔に関わる事実・新発見について、尾道市文化振興課 学芸員 西井亨さんにお聞きしました。


村上海賊 新発見15選はどのような展示会?

学芸員・西井亨さん(以下敬称略):令和5年度の村上海賊魅力発信推進協議会の事業として日本遺産『日本最大の海賊”の本拠地:芸予諸島-よみがえる村上海賊の記憶-』のストーリーにスポットを当てまして、村上海賊の様々な魅力を各地域、そして全国へ、そして世界へ発信していくために、地元の尾道と今治市で開催している巡回展です(今治市村上海賊ミュージアム、因島水軍城では既に終了)。今回、2016年の日本遺産認定以降に村上海賊やその末裔に関わる新発見・新知見について、15点の資料をもとにご紹介をしています

調査はどのように?

西井:村上海賊の調査は2016年の認定以降もずっと継続しています。尾道市、今治市、それぞれで行ってる場合もありますし、両市の学芸員が合同で行ってる場合もあります。尾道市では私が、今治市では村上海賊ミュージアムの学芸員が埋蔵文化財資料、あるいは文献資料、周辺地域を含め様々な資料をもとに調査しておりまして、その成果の一部が今回の展示に活かされています。また個人の方などから、古文書や甲冑、様々な資料を寄贈、寄託していただく場合があるんですけども、そうして新たに得られた資料からわかることもあります

15選とあります

西井:新たに得られた資料、調査してわかったことを15のテーマで紹介しています。今回の解説では代表的なものをいくつかご紹介します。
まず、村上海賊が活躍していたのは、南北朝時代から戦国時代、今から500~600年前という時代ですけども、尾道と今治の間の芸予諸島を巡り様々な文化交流が行われていたことがわかってきました。尾道の浄土寺にある宝篋印塔という石でできた塔。大三島・大山祇神社の宝篋印塔。実は同じ様式ということがわかってきました。村上海賊が活躍する以前から、文化交流があったということがわかってきています。近年、遺跡から発見される土師質土器、かわらけみたいな土器とか、瓦質土器、瓦ですね。こういったものが実は同じ様式、同じ形、そういった事例が増えてきまして、尾道とか鞆の浦とか福山市の草戸千軒、こういった遺跡などを含めた広域の流通圏、こういったことが明らかになってきています。そこにはこの芸予諸島を中心に海上交通を管理していた村上海賊が関わっているんじゃないかと考えられてきています。

そういった共通性がわかる資料の展示も?

西井:先ほど申しあげた土師質土器。尾道遺跡、あるいは草戸千軒町遺跡からも出土している ちょっと黄色っぽい土の同じような形のものが、今治とか 芸予諸島の方でも出土しています。また尾道の天寧寺、常称寺、こういった寺から出土している、宝珠唐草門という土器平瓦。これが愛媛県上島町の岩城島、祥雲寺というお寺の瓦と全く同じ型、模様が全く同じということが分かってきまして。同じ物流圏内にあったということが分かってきているんです。今回こういったものを展示しています

他にはどのような発見が?

西井:新たに寄託していただいた資料に『関船雛型絵図』というのがあります。関船というのは、主に戦国時代から江戸時代にかけて使われた中型の軍用船。戦いに使った船ですね。雛形というのは模型のことなんですけど、何十分の一になってる模型なんですが、それが神社、お寺によく奉納されるんですね。戦いに勝つためにとか、あるいは海上交通安全にとか、そういった意味があるんですけども。今回、寄託していただいた資料も、記録用あるいは観賞用として作成されているということがわかってきました。展示している雛形図の寸法は模型サイズで書かれてるんですが、実際の関船に忠実に描かれてるんです。実際の船の形、細かい木の形、船の形、全くそっくりに描かれているので、本当に本物を縮小した図面になるんです。材料も木材、竹としっかり書かれています。あるいは釘、鋲とかですね、それを打つ場所、紐の寸法とか。要はプラモデルの設計図みたいに詳細に書かれてるんですよね。そこから村上海賊も使用していた関船の詳細がわかる非常に重要な資料です。制作年代は書かれてないんですけども他の資料と比べて江戸時代あたりに制作されたものじゃないかなと考えています

関船の他に村上海賊が使っていたのは?

西井:村上海賊は関船の他には小早と呼ばれる10人乗りぐらいの小さい船を主に使用していました。村上海賊は非常に強かったと言われていますけど、強さの秘密はこの小早にあったようで。スピードが出るんですね、小さいし10人ぐらいで漕ぎますので。スピードが出て、小回りが利く小早は船を捕まえたり、あるいは戦いのときに相手より速く動いて優位に立てるという利点があったようなんです。現在でも因島水軍まつりで行われてる小早レースでその姿を見ることができます

今回の調査では新しい試みも?

西井:尾道市側の城跡を『赤色立体地図』で表して分析をしました。赤色立体地図は航空写真をもとに上から見た地形図なんです。ただしレーザーを照射して作ります。木とかそういった邪魔なものが除かれて、正確な地形を詳細に表すことができるという地図になっています。城跡など見るのにすごく便利なんですよ。村上海賊の城は立地が様々で、島そのものがお城であったり、岬の先端の方にお城があったり、海を望む山の上にお城があったり、様々なパターンがあるんですけども、そういった中で因島、向島は、島そのものが大きいので、山城、岬の城ってのが多いんですよ。余崎城とかも実は島であったっていう可能性があるお城もあるんですけども、そういったお城も赤色立体地図で確認することによって、どの部分に実際の構造が残ってるかとか、全てわかる地図なんです。実際の使い方としては、地図を見ながら現地を確認して、現地の地形と比べながらお堀りがあるとか、石垣があるとか、そういうのを全部確認していくことができるんですよね。今までの調査のように発掘しないとわからないではなくて、発掘しなくても地図を見ながら現地で確認できる、城の構造を確認できるという利点がありまして。今回、新たな分析方法として、その成果をご紹介をしています

今後、因島などで調査を?

西井:この赤色立体地図を使って因島の各お城、青影城とか青木城とか、様々なお城の現地調査をしてみたいと思っています。それとはまた別に、全くお城じゃないと思っていたところから新しいお城が見つかる可能性もあるんですよ。そういったものも、また現地調査をしてご報告したいと思っています

寄贈の資料にも貴重なものが?

西井:はい。因島水軍城に寄贈していただいたものなんですけども鎖帷子(くさりかたびら)を展示しています。鎖帷子っていうのは、丸いちっちゃい鉄の輪っかがいっぱい付いた防具なんですね。鎧みたいなものですけども。それを着ることによって守られているので、刀で切られたり、槍で突かれたりしても致命傷を負わないというか。あの甲冑ほど身動きが取りにくいわけではなくて、動きが取りやすい鎧といいますか。普通、鎖帷子っていうとですね、頭から肩まで全部1個のものでできてるものが多いんですけども、この寄贈された鎖帷子はバラバラなんですよ。頭があって手があって足があってというふうに。ただ肝心の体の部分がないんですよね。おそらくこれは体の部分は別の防具があってですね、それを補うように手とか、足とか切られやすいところを防具してるような鎧といいますか、そういうふうに考えています。これは村上海賊が使っていた、因島に伝わっていたものということで寄贈していただきました。村上海賊は船に乗ってますんで、甲冑をつけてると戦えないんですよね。海に落ちたらそれで終わりですので。だから非常に軽いものを着て戦っていたと考えられるので、この鎖帷子は、理にかなってるということで、村上海賊が使っていたものとしても全くおかしくはないものだというふうに考えています。こういった新しい資料等を踏まえて、村上海賊の当時の様子っていうのが少し見えてくるんじゃないかなというふうに考えています。

興味深いお話をたくさんありがとうございました。

西井:ありがとうございました


日本遺産調査研究成果報告 今治・尾道巡回展

「村上海賊新発見15選」
おのみち歴史博物館で開催中(12月25日まで)
https://www.city.onomichi.hiroshima.jp/soshiki/7/4035.html

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